クラシック音楽、小田和正、資格試験、医療記事批判などなど幅広い(節操のない)ブログ


by shy1221
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医療ドラマ「ウィズドロワル」第10話

第10話
県立病院の分娩室。赤ちゃんの誕生。ヒトリの満面の笑み。母親が涙ぐむ。助産師も涙ぐんでいる。
県立病院の医局研究室、ヒトリが溜まっていたらしいサマリーを書いている。荷物をまとめている途中らしく、すでに梱包されたラクテックか何かのダンボール箱が積み上げられている。まだ、荷物はたくさん残っている。
料理屋の2階。病棟の送別会のようである。
看護師長の挨拶。「皆さんも残念なことと思いますが、安全な医療を目指すという大学の方針と、将来的な県立病院の統廃合を視野においた県の方針で、先週の ○○さんのお産を最後に、もうこの病棟ではお産はとらないことになりました。ヒトリ先生が診ていた妊婦さんたちは県立A病院に移っていただくことになり、ヒトリ先生もお忙しかったのですが、なんとか、紹介状も全部だしました。ヒトリ先生はこの病院を辞められて、4月からは、ご実家の近くの○○大学病院で働かれます。○○さん、○○さんは県立A病院へ、○○さんは県立B病院へ助産師として移られます。○○さんは、新しいチャレンジということで、神奈川県の大学病院に移られます。○○さんは、これを機会にご家庭にはいられます。あと、何人かは助産婦が残りますが、一般の看護婦として引き続き病棟勤務をしますが、助産業務からは離れることになります。」師長は泣いてしまい、言葉が続かない。
病棟のメンバーもヒトリも泣いている。
病院の官舎。クロネコヤマトのトラックが止まっている。トラックを見送ったあと、RV車に乗り込むヒトリは珍しくスーツを着ている。私服の病棟メンバーらしい女が数人、ヒトリが運転するRVにさよならと手を振る。

海沿いの国道を走るヒトリのRV。とても気持ちの良い春の陽気である。
大学の医局。教授に挨拶をするヒトリ。元気でな、と何人かの医局員。
高速道路を走るヒトリのRV。ヒトリはびっくりするほど精悍な顔をしている。

クラノスケ外来。診察室に呼ばれるヒロイン。
ヒロイン「ずいぶん異動があるのね」
クラノスケ「まあね、あと、6月にも異動の科があるよ。常勤にしてもらっている科は結構6月異動だよ」
ヒロイン「ボーナスが出るから?」
クラノスケ「そう、ボーナスが出るから」
ヒロイン「クラノスケ先生は異動はまだよね?」
クラノスケ「うん、ボクは今年の9月異動だと思う。ボク、正規じゃないからボーナスないし。ヨシノさんとはあと半年のお付き合いの予定かな?この1ヶ月、変わりはないですかね?」
ヒロイン「変わりありません」
クラノスケ「白血球数もいいし、補体価もいいし、順調ですね」
ヒロイン「優等生ですから」
クラノスケ「じゃあ、今日はレントゲンとっていって、次は4週間後が連休にかかるので3週で来てね。今日と同じで診察前採血ね。で、薬は、………」

院長室。病院上層部が集まっている。ササノもいる。
院長の話。例の高校生の父親が、当院と主治医、すなわち、ササノ先生、クラノスケ先生を提訴してきた。ステロイド投与に伴ううつ状態を放置していたこと、カテーテル操作のあやまり、ということであるが異常死体の届出義務違反についても説明が欲しいと言ってきている。これは、ひょっとしたら、刑事も視野に入れられている、ということになるのかもしれない。父親は毎朝新聞のけっこうおえらいさんなので、頭が痛い。病院としては、一丸となって、ササノ先生、クラノスケ先生を守る方針である。

編集部。デスク「毎朝が出したよ」“カテーテルミスで◎◎総合病院と主治医2人を訴え”と見出しのある記事が載った新聞(記事は民事についてのみ)。「あの親父さん、ついにやっちゃったね。会社員51歳の長女なんて、毎朝新聞社の社員の長女だろうが。主治医って、ヨシノくんの主治医のことか?」
ヒロイン「そういうことになるわね」ヒロイン、しばし考えこむ。

ヒロインのマンション。ヒロインとデスクはワインを飲んでいる。
デスク「ヨシノからみて、主治医ってどうよ。悪いやつか?」
ヒロイン「ううん。働き者の小市民。損も徳もなく、山のような外来をこなして、病棟の患者の面倒をみて、透析当番の日は夜の11時まで必ず病院にいる。本当にミスだったとしても、故意にやったことじゃないはず。どう、考えても。それに、言いたくないことだけと、クラノスケセンセイは、しつこくしつこく、ステロイドを飲み始めたら、急にやめると死ぬこともあるって言ってた。どうやら、マサミちゃんはその約束を破ったわけでしょ。マサミちゃんのほうから、クラノスケセンセイを裏切っている部分もある」
デスク「ステロイドってそんなにウツになるもん?」
ヒロイン「クラノスケセンセイの言葉を借りると、文献的には一定の確率で、」と言って無言になる。
デスク「先週の毎朝の家庭欄で、“ステロイドとウツ”っていう記事があったんだ。もちろん、親父さんが書いたわけじゃないが、気になるな。今から思うと、ステロイドを内服中の患者が自殺したら、処方した医者の責任、なんてするために張った伏線かもしれないぜ」
ヒロイン、無言。
デスク「ほら、助産師がエコーしてる写真と一緒。毎朝新聞に書いてあることは、一般大衆にとっては教科書と同じで正しいことだ。真実に見える。でも本当か?違うだろ、お前の頭の中にあることを真実にするために書いてるだけじゃないか」
ヒロイン、無言。
会話が続かない。デスク「帰るわ」と帰っていく。

デスクが帰った後、ネットでサイトめぐりをするヒロイン。すでに1回見たページを見返しているようである。
某巨大掲示板の画面。
“◎◎総合病院カテーテル事件の真実って知ってる?”
“女子高生はJJ学院、かなりカワイイってJJOGのうちのねーちゃん。オヤジは毎朝新聞だって、サイアク。オヤジが権力つかって無理やり記事にしたと思われ。その証拠に毎朝新聞以外に記事なし”
“女子高生は自殺らしい。Churg-Strauss でテオドール飲んでた。再発を苦にして、テオドール一気か。テオドールでも死ねるんだってオモタ。女子高生も主治医もカワイソ。テオフィリン中毒なら痙攣しててもおかしくないから、ブラッドアクセスも難しいかも”
“ステロイド内服を中断していたらしい、ってわざとか?”
“某学会の東京中央部会で3月に発表されてる。発表、リアルタイムで聞きました。経過は迫力ありすぎでした。以下抄録コピー。……………..”
“◎◎総合、お祓い必要。去年、37歳の産婦人科医が癒着胎盤のオペ完遂後、SAHで死んでる。あの病院最近急がし杉。都立とかが駄目になったしわ寄せがきてる。産婦人科、帝切率40%越え目前との内部情報あり”
“抄録みても、ヘンな治療してるとは思えない。カテーテルの誤刺ではなく、出血傾向では?”
“もし、カテーテルミスがなかったとしても、助かっていたのか?女子高生。◎◎総合でなければ、透析までたどり着かなかったかも”
“世の中、毎朝新聞が真実だと思っているしあわせな人々大すぎ。個人的な恨みで記事書かれたらたまらん”
ふーっと息をつくヒロイン。

夜のバー、ヒロインとデスク。
ヒロイン「まるで、マサミちゃんがクラノスケ先生のせいで死んだ、と思ってるのよね、お父さん。でもね、あたし、マサミちゃんのお父さんの気持ちもわかる気もするの。だって、奥さんには、マサミちゃんの出産のときに出血多量で死なれてしまって、その後、再婚もしないでマサミちゃんを育ててきたのよ。マサミちゃんのお母さんは27歳だったんだって。マサミちゃんは女のあたしから見てもめちゃくちゃかわいかった。マサミちゃんはだんだんお母さんに似てきていたのかもしれない。マサミちゃんのお母さんは27歳から年をとっていないんだし」
デスク「そうだな」
ヒロイン「スミレちゃん(デスクの娘の名前らしい)がある日突然、心の準備がないときに病院で死んじゃったら、どんな気分になる?」
デスク「ヨシノには悪いけど、スミレはオレの命だから、たぶん死にたい気分になる。やっぱり医者をぶん殴るかもしれない、スミレを返せって。多くの場合、ぶん殴らなきゃならない相手は病気であり、運命であったりするんだけとね。」
ヒロイン、ちょっとさめた表情で「スミレちゃんとあたし、どっちがかわいい?」
デスク「そりゃ、スミレがかわいい」

JJ学院の一室。シスター穂刈とヒロイン。
シスター「あなたのことは良く覚えているわ。道に箱が落ちていたら、足を止めて箱を手に取り蓋を開ける。でも中身はとんでもないもので卒倒してしまう。でも次の日も、道に箱が落ちていたら、足を止め箱を手に取り、を繰り返す、そんな生徒でしたね」
ヒロイン「今日は、誰に相談したらよいのかわからなくて、でも、私の考え方の基本はここにあると思ってきました」
シスター「話してください」
ヒロイン、話を始める。入院先の病院でマサミと出会ったこと、だんだんマサミと打ち解けてきたこと、マサミがレイプ被害にあったこと、このことはマサミの父親には話していないこと、その後のマサミはヒロインの目から見たら比較的元気に見えたこと、マサミがおそらく自殺したであろうこと、マサミの死についてマサミの父が民事訴訟をおこしたこと、クラノスケはごく普通の真面目な医者であること、などなど。シスターは傾聴している。
ひととおり話を聞いた後、シスターは言った。マサミさんの不幸な事件については、あなたの心の中にしまっておきなさい。マサミさんのお父さんをこれ以上苦しめることはありません。マサミさんは自分の尊厳を奪われて、自分に刃を向けたのでしょう。マサミさんのお父さんは、一番大切なものを失って、その絶望と恐怖から、目を閉じたまま刃を振り回しているのかもしれません。あなたがお話してくれたように、マサミさんを失ったことを受け容れられずに一人で苦しんでいるのだと思います。私たちにできることは何でしょうね。私は6月の学園祭にお父さんをお招きして、マサミさんの日常について思い出を話し、一緒に祈ろうと思います。

夜のイタリアンレストラン(いつかヒロインとマサミがランチを食べた店である)。ヒロインとデスクが食事をしている。ワインが開けられている。
デスク「マサミちゃんのパパを救え、か。重いな」
ヒロインは無言のまま、メインの料理を食べている。

ホテルの一室。ヒロインとデスクはベッドの中にいる。
デスク「やってみるか?“大好きなクラノスケセンセイを救いたかったら、まずはマサミちゃんのパパを救え”か?」
ヒロインはデスクの胸に顔を埋める。

病棟でクラノスケは電子カルテに入力をしている。
時計に目をやり、病棟を出て、管理棟の小会議室に行く。
副院長と弁護士らしい男、プリントアウトしたカルテらしい書類を広げて、あれこれ。

朝、クラノスケのアパート。クラノスケ、目を覚ます。枕元の目覚まし時計に手をやる(目覚ましが鳴っているわけではない)。まだ、5時半である。布団をかぶり、目を閉じるクラノスケ。

病院の医局で、エクセルシオールカフェかどこかで買ってきたようなサンドイッチを食べているクラノスケ。歯を磨き、時計に目をやる。8時15分である。聴診器を首にかけ、文献をわきにかかえて、医局を出て行くクラノスケ。
(最終回に続く)
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by shy1221 | 2007-03-06 10:00 | TV、ドラマ、映画(冬ソナ以外)