クラシック音楽、小田和正、資格試験、医療記事批判などなど幅広い(節操のない)ブログ


by shy1221
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医療ドラマ「ウィズドロワル」第11話(最終回)

第11話 最終回スペシャル
編集部。デスク「“ある産婦人科医の死”反響いいね。オレが言ったとおり、春まで待ってよかっただろ。ハイリスク妊婦を扱う最前線の病院で中堅医師が過労死した。彼の父親は産婦人科の開業医だったが、気力の限界、と産科をやめることにした。彼の弟はそれまで働いていた地方の病院をやめ、都内の病院に移った。弟の後任はなく、その病院は産科を閉鎖した。実話だけれど、象徴的だよ。年齢階層別の産科医数とか分娩取り扱いをやめた施設の数とか、客観的なデータも揃えてある。ヨシノくんの力作だ。ほかでも、後追い企画はじめたみたいだけれど、これ、何か賞いけるぜ」
ヒロイン「でも、最後のフレーズだけは、ちょっとー、なんだけど、デスク」
デスク「彼が勤務していた◎◎総合病院は今、急性薬物中毒で死亡した高校生についての訴訟でゆれている、ってヤツか。医療ミスって書いてないだろ。あの一言を加えたことが、いろいろ大切なんだよ」

クラノスケ外来の診察室。ヒロインの診察が終わるところである。
クラノスケ「あっ、それから、ヨシノさんはよく知ってるとはおもうけど、まあ、あって、ボク、5月いっぱいで大学に戻ることになって、来月から診察医がかわります。○○センセイっていって、ボクの2こ下の学年。ちょっとイイ男だから、期待しててください」と少し寂しそうに言う。
ヒロイン「そうなんだ」
クラノスケ「いろいろ時間とられるから、この病院だとちょっときついし、少し休んだ方がいいって言われて、6月からは、ねずみさんの主治医。昔、大学院のときに研究してたテーマがあって、それの続きやれって」
ヒロイン「あたしの主治医でなくて、ねずみの主治医ね。ねずみ、文句言わないし、可愛いよ」としんみりしてしまう。ヒロイン、はっと思いついたように、バッグから名刺を取り出して、もう、医者と患者じゃなくなるんだから、今度ご飯でも食べようよ、と言い出す。クラノスケの反応はいまひとつである。ヒロインの横でおばさんナースが「何だ、コイツ」という表情をしている。

夜のバー。デスク「第1回口頭弁論まであと3週間か。どこをどう攻めてくるのかな。某巨大掲示板でも、最近はあまり書き込みないみたいだしさ、っていうか、燃料多すぎで次から次へ事件、訴訟だし。クラノスケセンセイ、元気か?」
ヒロイン「うん、会う機会なくなっちゃったからわからない。最後の診察のとき、名刺だして、ちょっとナンパみたいにしたんだけど。電話も来ないし。どこまで、関わっていいかがわからないのよね」

夜の透析クリニック。クラノスケのバイト先のようである。クラノスケは英文の文献を読んでいる。手帳のポケットにはさんであった名刺を取り出して見ている。ふーっとため息をついて、名刺を元に戻す。再び、英文の文献を読み出す。

JJ学院の一室。マサミの父、シスター穂刈、養護教諭、ほかに担任だったと思われる教諭。テーブルの上には紅茶とクッキー。
シスター「今日はお会いできてうれしいです。私の前にマサミさんがいるようです」
養護教諭「わたしはとても心にひっかかっていました。マサミさんは中学の頃から、保健室にはよく来ていました、正直言ってサボリかなって思うこともあったけれど、私は彼女から慕われていたような気がして、私にとっても彼女がやってくることはイヤではありませんでした。去年の夏、足にぶつぶつができた、と言ってやってきました。近くの皮膚科に行ったけれどよくわからないといわれたと言っていたので、学院の近くの◎◎総合を受診したら、といったら、あっという間に入院になってしまって、私もびっくりしました。退院してからは、疲れた、と言っては、ときどきやってきて、私たちはお茶を飲んだり、お菓子を食べたりしてすごしました。中学の頃は、○○看護大に行って保健室の先生になろうかな、なんていっていたけれど、退院してしばらくたってからは、勉強して医学部に進みたい、なんて話してくれました。あの日は、いつものようにやってきて、またサボリかな、なんて思っていました。ベッドで寝ていていいか、とマサミちゃんが言ったので、いいわよ、と答えて私は保健室を離れていたんです。…..」涙声になって続かない。
担任「無口で、自分が考えていることを自分から言い出すようなことがない子でしたけれど、心のやさしい生徒でした。学院は昔はのんびりしたところがあったけれど、今はだんだんと進学成績を気にされる保護者の方が増えてきて、求められるものも増えてしまい、人に勝つ、なんてことを考えるような生徒も増えてきています。プライドが高い女の子同士の世界で何ヶ月か不在の期間があって戻ってくるというのも、大変だったのかもしれませんね」

ひとり暮らしとなってしまったマンションで、缶ビールを飲んでじっと目を閉じるマサミの父(小木茂光)。

編集部。ヒロインに電話。クラノスケからである。新しい実験をはじめたので、医学最前線ということで取材も兼ねて研究室に遊びに来ないか、と。よろこんで、とヒロイン。

大学研究室。白衣をきてぼさぼさの頭をした女(寺島しのぶ)が実験装置をいじっているところへ、ヒロインが登場。「あのー、クラノスケセンセイって……」
白衣女「クラセンセイ、お客さん、美しい女性のお客さん」
クラノスケ登場。診察室で最後に会ったときよりは元気そうである。

研究室を出て、大学病院の地下食堂かどこか。
クラノスケ「その後、調子はいい?」
ヒロイン「うん。順調。あたし、しぶといから、あんまし問題おきないんだよね。クラノスケセンセイは元気だった?ちょっと心配してた」
クラノスケ「見てのとおり、ねずみのお医者さんだよ。さっきのとペアで実験の毎日だよ」
ヒロイン「少し、ヘンなこと訊いていい?病院やめちゃって生活とかどうしてるの?」
クラノスケ「医局長の口ききで、透析クリニックのバイトに行ってるんだ。夜だけ週3回。でもさ、時給で行ったら、病院で働いているときより、ぐっといいから、なんだかね、って感じ」
ヒロイン「クラノスケセンセイ、なんだかこの前より生き生きしてるみたい」
クラノスケ「そう見える?でも、僕、思うんだ。世の中の人って研究はバカバカしいって言うでしょ。試験管振ってるより、患者さんのベッドサイドにって言うでしょ。でもね、試験管を振ったり、ねずみさんのお世話をしたりする人間がいて、新しい病気のメカニズムの発見とか治療法の改良とかが出てくるわけじゃない?今は臨床はちょっとお休みをして、地道に世のためになる仕事だって思ってやってるよ。」
ヒロイン、ふーん、と言ってコーヒーを飲む。クラノスケは、大学の先輩が訴訟を起こされた後にうつ病になって自殺してしまったこと、自分の場合は、大学の医局が気を回してくれて、一休みポジションを与えてくれたので精神的にはなんとか落ち着いていること、などを話す。ヒロインは、“ある産婦人科医の死”が反響をよんでいること、なんだかこの1年弱で医療がおかれている現状について多くのことを学んだわ、と話す。クラノスケは意を決して、次は夜どこかで食事をしよう、とヒロインに言う。

ヒロインのマンション(実は結構散らかっている部屋なのであった)。デスクとヒロイン。
デスク「いよいよ来週だね。某掲示板にちょっと仕込んだよ。“これで有罪だったら、僕もうこわくて仕事できなくなりそうだから、来週は傍聴に行こうかな?”って」
ヒロイン「なにか釣れてきた?」
デスク「それなりに。お弟子の弟子ってのが書いての、ちょっと気に入ったよ。」
某巨大掲示板画面
“女子高生父もそろそろ、勢いで告訴したことをちょっと後悔してきてる頃かもしれません。もしもこれ読んでたら(読んでるわけ内科)、告訴をやめて、お遍路しませんか?僕も、僕を守ってくれなかった(怒)病院との戦いが終わった後、お弟子さんをまねてお遍路2回いきました。あたまの中がすかーっとなって、全ての光景が新鮮で心に刺さりました。朝早くから夜遅くまで病院の中にいると、青空の気持ちよさも、曇り空のゆううつも、雨ふりでがっかりもわかりません。女子高生父も他人の犯罪とか暗いニュースばっかり相手にしていないで、お遍路しましょうよ”
デスク「うちもさりげなく、毎朝新聞の報道姿勢を叩いてきたけれど、毎朝も最近はちょっと困ってるんじゃないかな?叩きすぎてさ、医療は崩壊の一途をたどるようになって、叩かなくても壊れていくから、叩く必要もなくなちゃったしね。マサミちゃんの件だって、告訴してみたのはいいけれど、勝ち目もあやしいようだしね」
ヒロイン「逆にネットでこれだけ叩かれちゃってるの、本人どれだけ知ってるのかしら。マサミちゃんも自分の父親が見ず知らずの人から頭おかしい扱いされてるの、きっとやだと思う」
デスク「クラノスケセンセイはどんな様子だ?こないだ研究室に行ってきたんだろ?」
ヒロイン「まあまあみたい。でも、ひょっとしたらもう臨床の現場には戻ってこないのかもって思った」
デスク、ヒロインのあごを持ち上げて、おまえひょっとしてクラノスケに惚れていないか?と言ってにやっといじわるっぽく笑う。

毎朝新聞社ロビー。スーツをびしっと着こなしたデスク。受付嬢に「約束していたものだが」と。
新聞社の一室。応接セットに座るのは、デスクとマサミ父のみ。女子社員はお茶を出し終わると室外へ。
マサミ父「お互い、こうして顔を合わせるのも久しぶりだ。“ある産婦人科医の死”読んだよ。なかなかの力作だ。うちの社でも話題になったよ。」
デスク「今日は、おせっかいに来た。大いなるおせっかいに来た。ここまで言えばわかるか?」
マサミ父「娘のことか?」
デスク「そうだ。お嬢さんの裁判のことだ。短刀直入に言う。告訴を取り下げろ」
マサミ父「それはたいそうずいぶんなことを」
デスク「裁判は誰のためにもならない。あなたの主張は医学的に見て、必ずしも正しくない。独りよがりで感情的だ。」
マサミ父、無言。
デスク「金なんて要らないんだろう」
マサミ父、無言。
デスク「クラノスケセンセイを追い詰めたいか?もう、追い詰められたよ。病院やめて、大学でねずみの世話係だ」
マサミ父、無言。
デスク「病院の名声を落としたいか?落としたからってどうにもならない。都立がどんどん駄目になっていて、◎◎総合には前にも増して、患者が集中してきている。ほかに行くところがどんどん減っているからね」
マサミ父、無言。
デスク「はっきり言うぞ。あの病院で何があろうとも、マサミちゃんは病気で死んだんだよ。それ以外のなにでもない。病気で天に召されたんだよ。病気のせいだ」
マサミ父、無言。

デスクが去った後。マサミ父はさめたお茶をすすり、頭を抱える。
机に向かい、ノートパソコンを開くマサミ父。某巨大掲示板の お弟子の弟子 の書き込みをじっと見ている。
マサミ父は目を閉じる。
(第11話 完)

<タイトルバック>

<エピローグ>
秋。 JJ学院チャペル。多くの友人たちに囲まれて、出てくる新郎新婦。クラノスケとヒロインである。人ごみから少し外れて、礼服を着たデスクがまぶしそうに新婦を見ている。デスクから少し離れて、やはり礼服を着たマサミの父。遠い目をしている。なぜかマサミ父の横にはさりげなく寺島しのぶがいてにこにこしている。

冬の朝、JJ学院校門。入学試験日のようである。デスクとデスクの妻、6年生らしい女の子。女の子の肩に手をやるデスク。「きょうは、実力をだして、がんばってきなさい」
女の子は、うん、といって駆け出していく。
女の子を見送ったデスク「ヘンな先輩みたいにならないようにね」とおおきく背伸びをしながら独り言。妻、えっという顔をする。デスク、ごまかす。
(完)
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by shy1221 | 2007-03-09 11:00 | TV、ドラマ、映画(冬ソナ以外)